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2022年度 第4回大会参加高等学校の研究発表

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焼津中央高等学校

発表テーマ:
「スーパーごみ発電~新しい超循環型まちづくり~」
指導教諭:
東友貴
研究メンバー:
濟藤康太朗、田森万葉、野田直希、原川夢叶、疋田知也、松浦朔太郎、米澤和真

日本はプラスチックなどのリサイクル率が低い。その理由としてはリサイクルのコストが高いことやごみ焼却技術のレベルが高いことが挙げられる。それゆえ、日本でのごみ処理法のベストは焼却であり、日本の誇る焼却技術を生かした未来を創造しようと考えた。国内にはごみ処理場が約1000施設あるが、このうち発電できる焼却施設は約30%で、発電効率も10%程度と低い。発電効率が悪い原因は、ごみに含まれる水分量が多いこと。この水分を焼却の前に飛ばすことで発電電力量を増やそうというのが、我々が考えるスーパーごみ発電だ。

ただ、家庭用ごみ乾燥機を全世帯に普及させるにはコストや時間がかかる上に、電気も使用する。また、家庭ごみよりも産業廃棄物の方が遥かに量が多く、汚泥などを乾燥できれば発電量の増加が期待でき、埋め立て処理に伴うメタンガスも発生せず、CO2削減につながる。このため、焼却施設に巨大乾燥装置を設置し、まとめて乾燥させた方が良いと考えた。熱源としては、現状はごみ焼却施設で捨てられている排熱を有効活用する。ごみ発電の効率向上で生み出された電力や熱を活用し、新たなまちづくりを行っていきたい。例えば、近隣住民の電気代を無料にしたり、様々なレジャー施設をつくる。私たちが計算した結果では、これは決して夢物語ではなく現実的だと分かった。これにより、高齢者の健康促進、雇用問題の解消、地域経済の活性化につなげていく。電気代が無料になれば若者の経済的な負担も軽減され、結婚率も間接的に増加し、子どもが多い元気なまちづくりも可能となる。2050年の未来は、こうしたスーパーごみ発電による超循環型まちづくりによって、持続可能な社会を築き上げることができる。

三島北高等学校

発表テーマ:
「Attractive city」
指導教諭:
山梨睦
研究メンバー:
安藤海砂、大矢仁湖、落合結愛、藤本晴香、増野光希、米野ひま莉

日本は化石燃料による火力発電に依存しており、今後は再生可能エネルギーを増やすべきである。その一環としてスマートシティーに注目した。スマートシティーのキーポイントになるのは太陽光パネルと電気自動車(EV)だが、それぞれ課題がある。このため、私たちはペロブスカイト太陽電池を搭載した新たなEVを提案したい。ペロブスカイト太陽電池は将来的に価格も下がり、発電効率も向上する見込みだが、酸素や水に弱い課題がある。そこで、優れた透明性があり、加工がしやすいメタクリル樹脂を組み合わせることを提案したい。

この組み合わせによって、EVだけでなく窓ガラスなど家の様々な場所に取り付けることが可能になる。ただ、現在もスマートシティーの導入は進んでいない。その理由は若者たちがワクワクするものがないから関心が向いていないと私たちは考えた。そこで、スマートフォンで見ているユーチューブなどの画面を空間に映し出すエアリアル・スクリーンなどが2050年に実現できれば、若者の関心を集めることができるのではないか。夢のような話だが、既に米国のスタートアップ企業はスマートコンタクトレンズというものを開発しており、2050年にはこうした技術がもっと発達しているだろう。スマートシティーの普及には住民の賛同が得られるかも問題だが、現在の高校生は世界の深刻な問題について深く学んでおり、新しい街の政策は今よりも受け入れやすく、実現可能性は高くなっているはずだ。

科学技術高等学校

発表テーマ:
「海水から生まれる水素の可能性」
指導教諭:
内田匡
研究メンバー:
大石悠太、恩田颯希、古永家章悟、髙田吉寵、西井千逸、深味倖朱

日本がカーボンニュートラルを実現するため、私たちは水素シティーをつくることを提案したい。水素は焼却時にCO2を排出せず、発電のほか、製鉄や運輸など様々な分野で利用可能だ。ただ、現在の水素製造は水蒸気改質法が主体で、CO2を排出することから環境に良いとは言えない。そこで、私たちは海水を電気分解して水素を製造することが考えた。海水は枯渇する恐れがなく、島国の日本にとってエネルギー自給率の向上にもつながり、海外の情勢変化にも左右されない。海洋深層水をくみ上げれば、プランクトンなど生態系への影響もないと考えられる。海水を電気分解するには主に3つの技術がある。

このうち、SOEC(固体酸化物形電解セル)は高温水蒸気で海水をそのまま電気分解でき、製造効率が他の方法よりも高い。このSOECと製鉄所を組み合わせれば、SOECに必要な熱の一部を排熱で賄うことができ、CO2も排出しない。日本の沿岸部の水素シティーとして、余剰の水素は近隣の石油化学工場でも利用できる。また、PEM(固体高分子膜)による電気分解は、日本の内陸部で淡水を使って水素を製造するケース、途上国沿岸で海水を再生可能エネルギーによって淡水にろ過して、水や水素の製造を行うケースが考えられる。水素は燃料電池自動車やアンモニア生成にも活用でき、途上国の経済発展にもつながる。まずは、ある程度の技術が整っているPEMによる水素製造を日本国内で普及させ、その後、途上国にも設置して国際社会に貢献する。将来的に、SOECの技術が確立されれば房総半島や北九州などの工業地帯に水素シティーが形成できる。その結果、水素の需要が増えて価格が安くなり、水素が普及するだろう。

榛原高等学校

発表テーマ:
「グリッドスケールの効率化~再生可能エネルギーの未来~」
指導教諭:
楠木翔
研究メンバー:
安達雄也、植田貴翔、岡田舞、落合陽菜、塚本俊輔、山田翔央

私たちは「グリッドスケールの効率化」「再生可能エネルギーの未来」という研究を進めてきた。今回、排熱などの無駄をなくし、カーボンニュートラル実現に近づくような提案をしたい。今後は化石燃料に依存せず、再生可能エネルギーで電気や水素を作ることに注目した。ただ、再エネは不安定で、蓄電も十分にできない。私たちは蓄電を安定させるために、電気を熱に変換する蓄熱技術、その中でも石(玄武岩)に熱を貯めるデンマークのグリッドスケールという新たな技術を研究した。石は温度変化に強い耐性があり、貯蔵できる熱量とコストのバランスが良いなど5つの利点がある。

グリッドスケールとは電気を熱に変えて充電・放電できる装置。玄武岩を粉砕したシリンダー内の温度を再エネの余剰電気を使ってコンプレッサーで600度Cにして充電し、逆に放電時はその熱で蒸気発電機を動かす。従来の蓄電池よりもコストが安く、効率が良く蓄電できる期間も長い。私たちはもっと効率的にグリードスケールを利用できないかと考えた。例えば、工場の排熱や天然ガス気化作業時の冷気を活用する。それにより、再エネ以上の電気が貯蔵できる。また、蓄熱した石を大型トラックで輸送し、その熱をすべて電気にできると仮定すると、理論上はCO2排出を伴う輸送距離が東京ー京都間(約500km)よりも短ければ火力発電よりもエコに電気を作ることができる。つまり500km圏内の地域であれば、臨海部でできた熱エネルギーを再エネが多い地域のグリッドスケールに運んで活用するということが考えられる。現在、グリッドスケールは実用化への実験が行われており、2025年には終了する予定。これが成功すれば2030年までには運用が始まるだろう。グリッドスケール単体でCO2をゼロにはできないが、このシステムによって再エネが拡大すればカーボンニュートラルに近づくことができる。

静岡市立高等学校

発表テーマ:
「プラスチックゴミのエネルギー化について~環境にも、私たちにも優しいプラスチックリサイクルの定着~」
指導教諭:
井出悠斗
研究メンバー:
岩本幸知、小川莉紗、花田和佳、柳琴水

私たちはグミなどのお菓子が好きだが、そのパッケージの多くはプラスチックで作られている。国内で廃棄されるプラスチックは約850万トンで、その半分近くが家庭から排出されるプラスチックパッケージだ。国内ではサーマルリサイクルが全体の半分以上を占めており、今後はケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルを増やしていく必要がある。マテリアルリサイクルは理想的で、デザイン性の高い再生品を開発すれば促進につながる。ただ、すべての廃プラスチックをマテリアルリサイクルで再利用するのは難しい。

ケミカルリサイクルは施設の規模が大きく、コストが高いという課題がある半面、アンモニアなどが製造できる。アンモニアは肥料やアクリル系の繊維などの原料になるほか、CO2を排出しない燃料として期待されている。このため、国内では3%しか利用されていないケミカルリサイクルを人々の暮らしにどのようにつなげていくかを考えた。1つ目はケミカルリサイクルで作られた炭酸ガスを地域の温泉施設などで活用すれば、プラスチックリサイクルの良さを実感してもらえる。2つ目はケミカルリサイクル施設が1つの機械として各家庭に備え付けられるようになれば、すぐに処理などができる。機械は高価になるかもしれないが、現状でもプラスチックを製造・利用している事業者はリサイクル費用を負担しており、この枠組みで機械をリースする方法などが考えられる。3つ目は地区で設置できるぐらい小型化できれば、ゴミ収集が必要なくなる。アンモニアの国際価格は上昇しており、1トン当たり約23万円。アンモニアには十分な価値があるので、今後はケミカルリサイクルを行うためのコストを低くしていく必要がある。ケミカルリサイクルの有用性を身近に感じて利用率を上げ、マテリアルリサイクルとも組み合わせることで、より良いプラスチックのエネルギー化が行われていくはずだ。

駿河総合高等学校

発表テーマ:
「廃油でバイオ燃料製造」
指導教諭:
豊田稜介
研究メンバー:
久保田海央、鴻池早織、駒場史音、髙橋光、田嶋結衣、土屋友花、服部碧生、藤原宏紀、堀瑠聖、
吉岡美奈、渡辺隼也

私たちは廃油でバイオ燃料製造することを提案したい。現在は化石燃料に依存しており、乗り物によるCO2排出量が多い。廃油も様々な課題から十分にリサイクルできていない。これらを解決するため、ミドリムシバイオ燃料を廃油に混ぜて再利用することに着目した。ミドリムシオイルはコストが高いため、使用済み食用油と混ぜてコストを下げる。エネルギー密度が高く、既存燃料のように使えるため、将来的に電気自動車が普及するのであれば、船舶や航空機での利用に適している。仮に、ミドリムシバイオ燃料で代用できれば、CO2排出量を約1500万トン減らすことが考えられる。

ミドリムシは食料と競合する心配がなく、CO2吸収量も多い。また、日本の農地面積は他の国と比べて小さく、他のバイオ燃料の原料となるトウモロコシなどから燃料を製造するのは困難だ。ミドリムシは海水でも育てることができ、海洋マルチプラントを建造して培養する構想もある。ミドリムシバイオ燃料はのコストを下げるには、製造プラントを大型化するとともに廃油を安く仕入れる必要がある。廃油を安く仕入れる方法としては、一般の方からお金を集めてバイオ燃料を製造し、その返礼品としてサプリメントなどミドリムシ製品を提供する仕組みを考えた。また、国の補助金を活用して、廃油をポイント制で回収する仕組みも提案したい。スーパーマーケットや公園などに廃油回収用ステーションを設置し、既に行っている天ぷら油の回収のような活動を行う。ミドリムシバイオ燃料だけで船舶や航空機の燃料生産が足りない場合、将来の技術革新が期待されるDAC技術を活用した合成燃料で補えば安定した燃料供給が可能になると考えた。今後、バイオ燃料の消費量は現在の6.5倍増加すると予想されている。そのためにも、技術の発展と個人個人の考え方を変えていくことが大切だ。

浜松開誠館高等学校

発表テーマ:
「シン・小水力発電~小水力の可能性~」
指導教諭:
加藤幹大
研究メンバー:
鈴木彩花、チュウドリ・アンジェリ、松野紗季、増井瑛太、山田周次郎

私たちは最初に水洗トイレの水圧や地域全体の排水を電力に変えるテーマを考えた。ただ、その発電効率は悪く、そこから得られる電力も微々たるもので、導入できる場所も限られている。そこで、水を使った発電の中でも小規模な水力発電に着目し、多くの場所に小水力発電を普及できればと考えた。日本では年間発電電力量のうち再生可能エネルギーの割合がこの10年間で2倍、全体の約21%になった。しかし、小水力発電の割合はずっと約2%のままで、何か画期的なことが起きないと今後も変化しないばかりか、むしろ減少する可能性すらある。

このため、私たちは小水力発電の普及に向けて、工業用排水、海水、火力発電を使った3つの小水力発電を提案したい。工業廃水ではプロペラ式発電機、海水は海水揚水発電、火力発電は放水時の勢いとクロスフロー水車を使った小水力発電を考えた。また、小水力発電の普及にはメンテナンスフリーも必要だ。今後は少子高齢化がさらに進み、小水力発電の管理費などが上がり、採算面から設備が放棄される可能性がある。メンテナンスフリーが実現できれば、管理費や人件費が抑えられるほか、現在は採算面で設置できない場所にも小水力発電を普及できる。現在も枯草などをかき上げる除塵設備を使用した小水力発電はあるが、当面はまず腐食防止の素材開発でメンテナンス回数の減少を図り、その後、2050年までに現在研究が進んでいる自己修復機能の本格実装が開発され、メンテナンスフリーが実現できると思う。現在のままは頭打ち状態の小水力発電だが、まだまだ可能性はある。他の発電方法と比べれば塵のようだが、様々な地域で普及ができることで塵も積もれば山となる。これら提案が実現できれば、身の回りにある水の流れがエネルギーになる未来になるだろう。