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2022年度(第4回)高校生が競うEnergy Pitch! / 活動内容

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オリエンテーション

  • 開催日:8月8日(月)、8月22日(月)

2022年度はオリエンテーションとエネルギー基礎講座①を組み合わせた講義を8月に開催しました。エネルギー・ピッチに参加する高校生にとって初めての講義。オリエンテーションでは、開沼博先生(東京大学大学院 情報学環 学際情報学府 准教授)からエネルギー・ピッチ発表に向けた心構え、発表内容を検討するに当たっての考え方、歴史の転換点とエネルギーの関係、事実(ファクト)を踏まえることの重要性などについて講義して頂きました。また、エネルギー基礎講座①では山本隆三先生(常葉大学名誉教授、国際環境経済研究所所長)からエネルギーと経済発展の関係、安定供給、経済効率性、環境適合(気候変動対策)のバランスの重要性や2050年の社会とエネルギーの在り方について丁寧に解説して頂きました。

開沼先生によるオリエンテーションの様子
山本先生によるリモート講義

エネルギー基礎講座

  • 開催日:9月9日(金)、9月16日(金)
  • テーマ:ネットゼロに向けた、世界のイノベーション

2022年度は大会テーマとして「SDGs達成に向けたエネルギーのイノベーションとは?」を掲げたこともあり、エネルギー基礎講座を拡充しました。講師の出馬弘昭氏(東北電力事業創出部門アドバイザー、IZM代表)からは、イノベーションの意味からはじまり、ネットゼロ達成にはイノベーションが必要不可欠なこと、そしてシリコンバレーで起こっていることを実体験を交えながら説明して頂きました。また、エネルギー・環境分野のスタートアップ(クリーンテック)企業の事例なども数多く紹介して頂き、高校生が自らのアイデアを考える上で多くのヒントを与えて頂きました。

出馬氏はクリーンテックの変遷や事例を紹介した
出馬氏と参加生徒らの質疑応答の様子

フィールドワーク

  • 【学校ごとの個別開催】
  • 開催日:10月下旬~11月中旬 学校ごとのテーマに応じて順次実施

  • 【フィールドワーク合同講座】
  • 開催日:11月8日(火)
  • テーマ:地域資源を活用した循環型経済モデルの紹介

フィールドワークは参加校がそれぞれ決めた研究テーマに応じて、大学・企業の第一線の研究者や担当者などと直接対話を行う場です。コロナ禍の影響もあり、基本的にはオンライン講義が中心でしたが、2022年度は学校での講義も2回開催しました。講師の方からは「水素に興味を抱き、どうすればよいかを考え、ディスカッションをすることは、非常に良い機会であり、うれしい限りです」(東芝エネルギーシステムズ株式会社の佐藤純一氏)、「(スマートシティーについて)電柱・電線はどうなるのから、スマートハウスの詳細、モビリティー進化による運動不足、若者のみなさんに真に受ける街など幅広い質問・コメントをいただき刺激を受けました」(大阪大学大学院の太田豊特任教授)との声がありました。

高校名 講義の内容 ご対応頂いた企業・大学・機関
科学技術高校 カーボンニュートラルに資する電極触媒の開発
~海水電解への応用~
カーボンニュートラルに向けた水素の役割
・山口大学大学院・中山雅晴教授
・東芝エネルギーシステムズ株式会社
駿河総合高校 バイオ燃料の事業開発について
菊川バイオガスプロジェクトについて
・株式会社ユーグレナ
・鈴与商事株式会社
榛原高校 ヒートポンプと蓄熱の仕組み ・東京電力ホールディングス株式会社
三島北高校 電気自動車とスマートシティー
火力発電の最先端技術について
・大阪大学大学院・太田豊特任教授
・株式会社IHI
焼津中央高校 ごみ発電技術と今後の技術開発の可能性と課題
少子高齢化社会のごみ処理の在り方と地域活性化
・JFEエンジニアリング株式会社
・国立環境研究所
静岡市立高校 使用済みプラスチックのアンモニア原料化事業
デザイン力を使った再生プラスチック製品の利用促進
・昭和電工株式会社
・大日本印刷株式会社
浜松開誠館高校 小水力発電の仕組みについて ・荏原商事株式会社
駿河総合高校へのユーグレナの講義風景
三島北高校の質問に答える
大阪大学大学院の太田特任教授

また、11月8日にはフィールドワーク合同講座をハイブリッド形式で開催しました。講師の中井俊裕氏(ふるさと熱電株式会社取締役、静岡大学客員教授)は、熊本県小国町で進める地熱発電を題材に、地域資源を活用して得た財源を地元に投資し、未来につながる事業を創出していくサイクルなどを解説。持続可能で地域経済に結びつくビジネスモデルの考え方の前段として、講義冒頭ではビジネス視点でのSDGsの捉え方やエネルギーを巡る国際関係も説明して頂きました。高校生からも「自分たちはいままでエネルギーの観点からしか調べていなかったので、どのように利益を出していくかという別の視点から話を聞けたのは非常に参考になった」(駿河総合高校)といった感想が聞かれ、講義後も熱心に質問する生徒がいました。

合同講座は静岡市内のリアル会場と
オンラインによるハイブリッド形式で開催した


予選会・修正ミーティング

  • 開催日:11月19日(土)
  • 場所:「グランシップ」(静岡県コンベンションアーツセンター)
        11階会議ホール「風」

 2022年度の予選会会場はJR東静岡駅近くの「グランシップ」。まず予選会の前にオープニングランチが開催され、参加高校の教諭・生徒、審査委員が自己紹介を行い、昼食をとりながら歓談が行われました。予選会はこれまで研究を進めてきた内容を初めて発表する場ですが、選抜をする訳ではありません。各校の発表に対して、当日出された審査委員や他校の教諭・生徒からの意見や指摘を踏まえ、それぞれの発表内容をブラッシュアップすることが目的です。審査委員からは発表内容に対して厳しい指摘も。15分という長いようで短い時間の中で、自分たちの発表内容の要点をいかに的確に伝えられるかが問われます。それだけに、論理だった発表内容に加えて、発表の仕方などについても助言が聞かれました。高校生たちは発表内容に対する指摘を整理し、手分けして調べ物をするなど、夜遅くまで修正作業を続けました。

予選会の会場
予選会で発表する浜松開誠館高校の生徒
オープニングランチでは教諭・生徒1人1人が
自己紹介した
他校の発表内容に対する意見を付箋に書いて
貼り付けていく
発表後の修正ミーティングでは、個別に審査委員の
助言も聞きながら内容をブラッシュアップした

エネルギー・ピッチでは予選・本選に「グラフィックレコーディング」を導入しています。各校の発表を聴きながら、その要点を第三者の視点から絵にしていくことで、発表内容の「見える化」に加えて、発表で欠けている点など当事者も気づかなかったことを視覚的にとらえることができる仕組みです。審査委員や他校の教諭・生徒からは率直な疑問や指摘も多く出され、毎年ですがボードは付箋でいっぱいになります。

発表内容はグラフィックレゴーディングでまとめられた
グラフィックレコーディングを参考にしながら修正作業が行われた

発表会【本選】

  • 開催日:11月20日(日)
  • 場所:「グランシップ」(静岡県コンベンションアーツセンター)1階中ホール「大地」

2日目の本選は正式な発表の場です。会場は「グランシップ」の中ホール「大地」で、今年は一般の方も傍聴できる形で開催しました。開会後、まず総合コーディネーターの開沼博氏がこれまでの学習の経過、各校のフィールドワークの実施状況、予選会の様子などを説明しました。各校は昨日の予選会で出た指摘などを踏まえ、不足していた部分を補ったり、スライドを変えて論旨を整理するなど、それぞれブラッシュアップした内容を発表しました。質疑応答では発表内容の妥当性や実現可能性、コストに対する考え方など、審査委員との間で濃密なやり取りが繰り広げられました。発表内容はごみ発電、スマートシティー、プラスチック、ヒートポンプ、水素など多彩で、来場者の方々も熱心に耳を傾けていました。
 また、審査時間中はクイズ作家の日髙大介氏が「クイズ発想で楽しみながら学ぶ!」と題して講演しました。厳正な審査の結果、ごみの水分をまとめて乾燥させて発電効率を向上するスーパーごみ発電による超循環型まちづくりを提案した焼津中央高校が初出場ながら最優秀賞に輝きました。この他、優秀賞には三島北高校、科学技術高校、敢闘賞には榛原高校、静岡市立高校、静岡新聞社賞は駿河総合高校、電気新聞賞には浜松開誠館高校がそれぞれ選ばれました。

本選終了後の記念撮影
本選で発表する三島北高校の生徒
発表内容に真剣なまなざしで聞く審査委員
最優秀賞に輝いた焼津中央高校の先生と生徒
クイズ作家の日髙氏が特別講演を行った

審査員の講評

  • 山本 隆三氏
    常葉大学名誉教授
    今年は非常にレベルが高く、どの高校もよく調べて勉強していました。その中でも、焼津中央高校は発表方法も芝居仕立てで面白く、工夫しておりチームワークも良かったと思います。他の高校も非常に良かったです。スーパーごみ発電、スマートシティー、水素シティーなど、みなさんが発表したことは実際にすぐに社会で使えそうな話があったと思います。そういった点も頭に入れながら、今後の研究や進路をぜひ考えて欲しいです。
  • 郡司 賀透氏
    静岡大学教育学部准教授
    初めて参加させて頂きましたが、エネルギー・ピッチの発表はレベルが高いと感じました。2050年は高校生のみなさんにとっては、まもなく来る時代。最近は夢を見ることが少なくなっているのかもしれませんが、今日のアイデアを自分の学校だけでなく、いろいろな学校の人と交流していく中で伝えていき、2050年を楽しい時代にしてもらいたいです。
  • 萱野 貴広氏
    静岡STEAM教育推進センター・理事
    今回、高校生のみなさんが取り組んでくれた問題は、科学や技術だけでは最終的に解くことが難しく、みなさんを含めた社会的な合意というものが必要になってきます。ここに至るまで、高校生のみなさんは多領域にわたる研究や調べをやってきたと思います。この経験は、これから2050年の中心となるみなさんの大きな糧になると思います。
  • 築地 茂氏
    静岡新聞社編集局論説委員兼編集委員
    発表の動機付けを説明する部分で、お菓子が好きとか身近にあるごみ問題など、そこからエネルギーを考えるということは、これからのみなさんの生活にとってもすごく大事なことです。エネルギー問題というと難しく聞こえますが、そもそもは身近なところにあるもので、最終的に私たちの暮らしそのものにつながります。そういうことも考え、これから日々の生活を充実させていって欲しいです。
  • 間庭 正弘
    日本電気協会新聞部(電気新聞)新聞部長
    予選会で受けた指摘を真剣に考えて、多くの時間を割いて修正作業をしたということは本当に素晴らしいことだと思います。これからの社会問題はたぶん一人では解決できません。この経験を生かして、みんなの知恵を持ち寄って解決するという取り組みが本当に必要になってきます。また、多くの人の前で発表するということも非常に良い機会だと思います。考えていることや思いついたことを思い切って口に出して提案してみるということが、社会を動かしていく力になると思います。
  • 開沼 博氏
    東京大学大学院情報学環准教授(総合コーディネーター)
    いろいろと評価は分かれましたが、大きく2つポイントがありました。1つがきちんと全体像を見つつ、小さな具体例を積み上げられるかという点です。2050年に至る30年間という時間軸、あるいは日本や世界の動きがどうなっているかという全体像を捉えつつ、個別テーマの細かい部分も全体像と関係があるという説明ができるかで評価が分かれました。もう1つは根拠で、いかに説得力を持たせられるかが大切です。ある技術とある技術が組み合わさると新しい社会像になって希望が感じられると発表する際にも、きちんと数字で積み上げて説明すると、それを応援しようという気持ちになれます。こうした「全体像と具体像を往復する」、「量的根拠などを積み上げていく」ということは、大人になっても絶対に必要なスキルです。今回、学んだことを今後の人生にぜひ生かしていってもらいたいです。