第6回高校生が競うエネルギーピッチ

共通活動

(2050年基礎講座、エネルギー基礎講座、テーマ別講座、クイズ大会)

開催日:8月9日(金)
開催形態:リアル開催(会場:「あざれあ」静岡県男女共同参画センター)

 2024年度は夏休み期間中に参加校すべてが参加するオープンセミナーを開催しました。
[当日プログラム]
①2050年基礎講座 「人口減少問題について」
講師:太田隆之氏(静岡大学 地域創造学環 人文社会科学部教授)
②エネルギー基礎講座
講師:山本隆三氏(常葉大学名誉教授、国際環境経済研究所所長)
③テーマ別講座
「自動車×エネルギー」 講師:渡部健氏(株式会社REXEV 代表取締役社長)
「社会インフラの維持×ゲーム」 講師:世良信一郎氏(株式会社イーフープ 代表取締役)
「くらし×(省)エネルギー」 講師:中井俊裕氏(静岡大学 客員教授)
④クイズ大会 メンバー無作為の8チームで予選を行った後、上位4チームで決勝戦を行いました。

 2024年度は生徒のキックオフイベントとしてオープンセミナーを開催し、全10校の生徒・教諭ら約60人が参加しました。プログラムは今年の課題からエネルギーの基礎的な知識、3つのテーマ別講座まで、1日を通じて基礎的な内容が体系的に学習でき、自らのテーマを考える上で参考となりそうな講座としました。午前は静岡大学教授の太田隆之氏が今年の課題である人口減少問題は経済・社会にどう影響し、地域を誰がどう支えていくかを解説。国際環境経済研究所所長の山本隆三氏にはエネルギー基礎講座で、エネルギーの考え方、安定供給や温暖化問題を考える上で大切なことなどを説明していただきました。午後はテーマ別講座として、3つの講座を同時に開催。生徒らが自らのテーマを考えるヒントを与えていただきました。また、ランチミーティングやクイズ大会を通じて、生徒同士の交流も深めました。

2050年基礎講座では人口減少が社会や経済にどう影響するか
などを学んだ
テーマ別講座では講義終了後に熱心に質問する姿も
往年のクイズ大会のセットを用いて盛り上がった

開催日:①8月22日(木)明電舎・沼津事業所 ②8月23日(金)中部電力・浜岡原子力発電所
開催形態:①県東部、②県中部・西部に参加校を分けて開催
参加者:全参加校の生徒・教諭(約50人)

 県東部地域と県中部・西部地域に高校を分けて、コロナ禍後としては初めて施設見学会を開催しました。①明電舎・沼津事業所の見学会では、環境に配慮したGX特別高圧変電所を見学したほか、技術研修センターでのVR(仮想現実)安全体験、メタバースの世界の中で電気設備に触れる貴重な体験をしました。②中部電力・浜岡原子力発電所の見学会では、発電所構内の防潮堤などを見学しながら、原子力発電の仕組みから再稼働に向けた安全対策などを学びました。

GX特別高圧変電所を見学する生徒ら
原子力発電の仕組みから再稼働に向けた安全対策などを聞いた

開催日:9月19日(木)、9月20日(金)
開催形態:Zoomによるオンライン講義+質疑応答
講師:開沼博氏(東京大学大学院 情報学環 准教授)

2024年度は8月の「夏のオープンセミナー」や「エネルギー関連施設見学会」を踏まえて、9月に開沼博先生によるオリエンテーションを開催しました。講義ではエネルギー・ピッチの心構えから始まり、自分たちの発表を構築するためには、まず「問い」を考える必要があることなどを説明していただきました。また、「勉強」にとどまらず「研究」というレベルに至るまでの方法論、2024年度の課題に対する考え方などについても解説していただき、生徒らが自らのテーマ選定を進めるためのヒントを与えていただきました。

質疑応答では活発なやりとりが行われた
開沼先生からテーマ選定の考え方などを聞いた

【学校ごとの個別開催】
開催日:10月下旬~12月上旬 学校ごとのテーマに応じて順次実施

フィールドワークは参加校がそれぞれ決めたテーマに応じて、大学・企業の第一線の研究者や担当者などと直接対話を行う場です。基本的にはオンライン講義が中心ですが、講師のご意向に応じて学校での直接講義も一部実施しました。講師の方からは「高校生のみなさんも熱心に聞いていただき、今後も農業や障害のある人たちについてなど興味を持っていただければ嬉しいです」(京丸園株式会社)、「生徒さんもスマート漁業や弊社の取り組みへの理解が深まり、発表に向けていろいろなヒントを得ていただければ幸いです」(セイカダイヤエンジン株式会社)との声がありました。

高校名 講義の内容 ご対応頂いた
企業・大学・機関
伊豆中央高校 2050年に向けたヤマト運輸の取り組み
  • ヤマト運輸株式会社
御殿場南高校 ソーラーシェアリング事業と農業について
  • 静岡ガス株式会社
    株式会社鈴生
ユニバーサル農業と農福連携について
  • 京丸園株式会社
駿河総合高校 日本の原子力発電の状況
  • 日本原子力産業協会
  • 太陽光発電の現状と将来、電力システムとの関係(録画視聴)
  • 東京理科大学 植田譲教授
榛原高校 リニューアブルディーゼル(RD)燃料について
  • 伊藤忠エネクス株式会社
人類と自然が共存する新しいエネルギーエコシステムを創る
  • バイネックス株式会社
沼津中央高校 「農業×ICT」を通じた地域経済の活性化や街づくりをめざして
  • 株式会社NTTアグリテクノロジー
日本経済における農業の役割(農業と地方経済)
  • 株式会社エムスクエア・ラボ
焼津中央高校 エネルギー効率やエネルギー利用について
  • 中部電力株式会社
漁船の未来と水産業スマート化に向けて
  • セイカダイヤエンジン株式会社
科学技術高校 水力開発と価値向上プロジェクトの取り組みについて
  • 東京発電株式会社
沼津中央高校で行われたエムスクエア・ラボの講義風景
オンラインで行われた駿河総合高校への
日本原子力産業協会の講義

開催日:12月14日(土)
場所:「ツインメッセ静岡」北館3階・第3小展示場

 2024年度の予選会は静岡市駿河区の「ツインメッセ静岡」で開催しました。例年同様、予選会の前にはオープニングランチが開催され、参加校の教諭・生徒が自己紹介を行い、昼食をとりながら歓談が行われました。予選会はこれまで探究活動を進めてきた内容を初めて発表する場。各校の発表に対して審査委員や他校の教諭・生徒から意見や指摘が出されます。審査委員の方々からは厳しい指摘も出ますが、自分たちの発表内容に何が足りないかが明確になるため、それぞれの発表内容をより良い内容に改善していきます。また、自分たちの発表内容の要点をいかに的確に伝えられるかも重要です。15分という限られた時間の中で、発表内容をいかに整理して、自分たちの考えをどううまく伝えられるのか。高校生たちは発表内容に対する指摘を確認し、手分けして調べ物をするなど、夜遅くまで修正作業を続けました。

発表順は各校代表者によるくじ引きで決めた
予選会で発表する焼津中央高校の生徒

 エネルギー・ピッチ会場審査部門の予選・本選では「グラフィックレコーディング」を導入しています。専門のグラフィック・レコーダーの方が各校の発表を聴きながら、発表のポイントを第三者の視点から絵にしていきます。発表内容の「見える化」だけでなく、発表で何が欠けていたのかなど、当事者も気づかなかったことを視覚的にとらえることができる仕組みです。予選会では審査委員や他校の教諭・生徒が疑問や意見を付箋に記入し、グラフィックレコーディングのボードに付箋を貼っていきます。

他校の発表に対して、生徒らが付箋に書いた
疑問点を貼っていく
グラフィックレコーディングによって
発表内容の要旨が描かれた周辺は、
多くの付箋で一杯になった
発表後の修正ミーティングでは、審査委員の助言も聞きながら
内容をより良いものに見直していく
予選会会場の様子

開催日:12月15日(日)
場所:「ツインメッセ静間」北館4階・レセプションホール

 正式な発表の場である2日目の本選は、「ツインメッセ静岡」北館4階・レセプションホールで行われました。参加校は開始直前まで自らの発表スライドの修正に取り組みました。本選では最初に総合コーディネーターの開沼博氏が今年度の活動の経過、各校のフィールドワークの実施状況、予選会の様子などを説明。その後、各校の発表が順番に行われ、各校とも昨日の予選会で出た指摘などを踏まえ、前日よりもブラッシュアップした内容を発表しました。質疑応答では審査委員から発表内容の妥当性、コストや実現可能性に対する考え方などの質問が出され、生徒のみなさんはそれに答えていました。発表内容は、トウモロコシによる地域活性化、農業・福祉・エネルギーの連携、スマート漁業とバイオマス発電、原子力発電と再生可能エネルギー、合成燃料車の普及などバリエーション豊かで、来場者の方々も各校の発表に熱心に耳を傾けていました。
 厳正な審査の結果、耕作放棄地で栽培したトウモロコシをバイオ燃料に活用するアイデアを提案した榛原高校が初めて最優秀賞に輝きました。優秀賞には御殿場南高校、敢闘賞には駿河総合高校、焼津中央高校、静岡新聞社賞は伊豆中央高校、電気新聞賞には沼津中央高校がそれぞれ選ばれました。

各校とも前日からブラッシュアップした
内容を発表した
発表ごとに審査委員からの質疑応答が
行われた
初めて最優秀賞に輝いた榛原高校の生徒と先生
全体での記念撮影

榛原高等学校

発表テーマ: 「トウモロコシによる地域活性化&その普及計画 〜耕作放棄地の活用〜」
指導教諭:北川浩
研究メンバー:薄波瑛真、奥山颯太、紅林伶奈、坂岡來夢、松浦芽衣子

 牧之原市は全国の茶畑の面積のうち10%を占めるが、そのうちの10%は耕作放棄地となっており2050年問題にもなっている。そこで私たちはトウモロコシを植えることで、地域の活性化とカーボンニュートラルの実現を目指すことを考えた。「地道にコツコツ」をキーワードに、地元で成功例を増やし、それを他の地域に広げていきたい。具体的には、茶畑の耕作放棄地に植えたトウモロコシを原料にバイオエタノールを製造し、まず農機具に使用して自給自足を目指す。将来的にトウモロコシはSAFなどその他のバイオ燃料を製造する会社にも出荷していく。ただ、私たちの提案には「労働者不足」、「食料との競合問題」、「農機具が故障する可能性」といった課題がある。労働者不足については、JAと連携し耕作放棄地が再生できるよう協力を仰ぎたい。食料との競合問題に対しては、トウモロコシは品種改良や遺伝子組み換え技術によって、大量生産やバイオ燃料と家畜の飼料の両立も可能となりつつある。なぜ国産のトウモロコシをわざわざ使うのかという疑問もあるかと思うが、円安によって現在のトウモロコシ価格は輸入品が43.3円に対して、国産は45円とその差はわずかになっている。2030年にはエアラインによる燃料使用量の10%がSAFに、そして2050年までにはSAFをはじめとした様々なバイオ燃料が普及することを見越して、私たちの牧之原市からトウモロコシを出荷していきたい。

御殿場南高等学校

発表テーマ: 「ダイバーシティーファーム 〜輝く未来と笑顔を創る〜」
指導教諭:芹澤光
研究メンバー:小林健、笠原春太郎、長南弦貴、横山來夢

 2050年にすべての人が自らの意思で労働に向かう社会を実現したい。私たちは農福連携、バイオマス発電を掛け合わせたダイバーシティーファームを考えた。日本は人口減少などで2050年には若者1.2人で年配1人を支える世の中になってしまう。そこで就労困難者という方々の存在に注目した。ただ、実際問題として障害者、高齢者、外国人労働者といった方々が働くためには、それぞれの課題を解決していく必要がある。私たちは農福連携に注目し、フィールドワークを行った。規模の大きいたくさんの就労困難者が働ける事例として笠間農園がある。ここではビニールハウス58棟で小松菜などを生産しており、就労困難者は自分がやりたい作業を選択できる。現在、コンパクトシティー化を進めている熊本市で試算した結果、三島市の約3倍の土地が利用可能で、ここで笠間農園を参考に小松菜を生産すると2500トン生産できる。一方、収支試算ではビニールハウスの温室に使う電気使用量が多く、エネルギーを自給することが重要。間伐材からの木片チップを使ったバイオマス発電を使い、電気は居住地のコンパクトシティーに供給し、排熱はビニールハウスの暖房に活用する。このように就労困難者が作る農作物や電気を都市部に送ることで、相互に支えあう世の中を作ることができる。我々の作るダイバーシティーファームとは農業、福祉、エネルギーの3要素がからまることで、そこに笑顔、自分らしく生きる道を見つけられる取り組みだ。

駿河総合高等学校

発表テーマ: 「原発×再エネ ~エネルギーミックスがもたらす2050年の姿~」
指導教諭:豊田稜介
研究メンバー:武内琉位、大矢煌真、金崎蒼輝、鍋島陽

 日本では人口減少が進む一方、AI普及などでデータセンターの利用が増加する。今後はより電力が必要となり、CO2排出量が少ない原子力や再エネが重要になる。そこで私たちは若者・高齢者に原子力への理解を深めてもらうことを提案したい。校内アンケート(回答168件)を行った結果、原子力発電に賛成は55.4%、反対は44.6%だった。反対の理由は「事故のイメージがある」が多かった。そこで反対の方に原子力のメリットを挙げた資料を提示した後、再びアンケートを行ったところ42.7%の方が反対から賛成に変わった。その理由は「安定性・環境保全」、「CO2排出量が少ない」が多く、原子力発電の現状を知ってもらうことが効果的だと分かった。57.3%の方は反対のままだったが、「良い部分しか載せておらず不信感を覚えた」という意見もあり、正しい認識を広げるためにはデメリットとその対策も伝える必要があると考えた。米国の世論調査も調べたが、原子力への正しい認識度合いが高いほど賛成の比率も高く、我々のアンケートと似た結果だった。我々が伝えなければいけないこととして、「原子力発電の安全性」「環境に良い」「発電量が多い」「コストが低い」「デメリットとその改善策」の5つを挙げたい。今後、若者にはSNS、高齢者には新聞を通じた原子力の広報活動を行っていくことで、原子力発電所の再稼働を通じた脱炭素社会の実現、将来的には核融合発電を進めることにつなげていきたい。

焼津中央高等学校

発表テーマ: 「SFBC City(Smart/Fisheries / Biomass / Compact)」
指導教諭:佐藤幸弘
研究メンバー:鈴木陽菜、片岡絢心、藤井紗也香、加納颯馬、紅林滉太、山田豪人

 地域の課題として焼津市の漁業就業者は減少しており、高齢化も進んでいる。エネルギーでは電気を火力発電に頼っていることが課題と考えた。焼津の漁業が衰退しないためにもスマート漁業を導入して少人数でも行えるようにし、漁業関連で必要なエネルギーは地産地消のバイオマス発電で賄っていきたい。スマート漁業でAIやICTを利用すれば最適な漁場を見つけ出せ、ベテラン漁業者の経験や技術も継承できるようになる。焼津市はデジタル水産業戦略拠点にも選定されており、スマート漁業導入へ前進しつつある。ただ、今の漁業を続けていくにしても、スマート漁業を進めるにしても、いままで以上に電気が必要になる。例えば、焼津漁港の冷凍庫では3670kWが必要。こうした電力はカーボンニュートラルを目指す上でバイオマス発電で賄っていきたい。大井川流域には利用されていない木が多くあり、木の成長量を考えて4000kW規模であれば十分に賄える。バイオマス発電所の建設に必要な資金はふるさと納税を活用する。焼津市のふるさと納税返礼品は約半分が魚関係で、税収は2023年に31億円増加しており、その半分を使えば3年でバイオマス発電所が建設できる。人口減少によって機械化が進むと、電力消費量が増大する可能性があり、再エネなどによるエネルギーの地産地消が大切になる。2030年に焼津市に自給自足のバイオマス発電を導入し、2050年には他の地域でも同じような地産地消を広げていきたい。

沼津中央高等学校

発表テーマ: 「日本の農業を活性化する」
指導教諭:井口美紗子
研究メンバー:高畑楓、佐藤颯、米山諒

 私たちは、若者が就農したくなる農業の魅力を発信し、こぞってやりたがる職業にするという目標のもと研究を進めてきた。日本の食料自給率は低く、農業従事者も高齢層に偏っている。食料をなるべく他国に頼らないためにも、若者に農業をしてもらいたい。しかし、現実的には校内アンケートの結果でも、農業は「重労働」、「収入が安定しない」などのイメージがある。若者が農業を魅力的に感じるためには、負担の少ない労働環境と安定した収入が前提となる。そこで効率的で大規模な施設栽培が必要と考えた。まず野菜の大規模ハウス栽培から始めるべきだと考え、その際に1ヘクタールの農業と公的支援金の利用を組み合わせることで、大規模農業と新規就農者の金銭的な負担の大幅軽減の両立が図れる。また、フィールドワーク先のスマート農業の事例を踏まえると、労働時間も1日6時間程度で済むほか、この規模でトマトの二期作を行うと仮定すると高水準の収益も期待できる。さらに、作物に付加価値をつけて海外輸出やブランド化して販売できれば、さらなる収益確保の可能性がある。今後、新規就農者の団体が既存の農家や経営の専門家から知識の提供を受けるとともに、将来的に新たな大規模ハウス農家が利子付けで支援金を提供するような循環が必要だ。また、小売りを含めた農業における各情報のクラウド化も求められる。法人化も含め、こうした大規模ハウス栽培のモデルが示せれば、次世代農業の就農者増加につながるだろう。

伊豆中央高等学校

発表テーマ: 「温暖化による熱中症のリスクを減らすために 〜高齢者を守るために〜」
指導教諭:清水隆弘
研究メンバー:山口瑠璃葉、古屋俊翔、板倉優斗、大澤心結、斎藤悠翔、西島楓翔、宮崎祐倭斗

 身近なところで高齢者の熱中症というニュースをよく目にするようになった。その原因は地球温暖化の影響で、化石燃料を使い続ける限りCO2排出量は減らない。このため、私たちは2050年までに運送業でのCO2排出量ゼロを目指すことを考えた。合成燃料はCO2と水素をかけあわせた燃料。現在のガソリン車でもそのまま使えるほか、CO2排出量もゼロにできる。水素を使った場合はエンジンの改造に莫大なお金が必要となるが、合成燃料は車側の初期費用がかからず、日本全体のCO2排出量のうち18.5%を占める運輸部門のCO2削減につながる。既にチリでは風力発電で作った水素を原料に合成燃料を製造し、ポルシェの試乗会やレースで使用している。欧州では航空燃料や自動車燃料として製造と使用が進められている。日本でもENEOSが2025年の大阪・関西万博で大型車の運行に使用予定だ。ただ、合成燃料を使ってエンジンの不調が起こった場合、日本の物流が止まってしまう可能性がある。このため、トラックから鉄道へのモーダルシフトも行っていく必要がある。国土交通省が行った紙製品と飲料製品の異業種ラウンド輸送による実証ではCO2排出量が6割減、ドライバー運転時間が7割減となった。当初は他国からの輸入による合成燃料で基盤を作り、2050年までに国内で合成燃料を普及させていき、最終的には運送でのCO2排出ゼロにして熱中症にならないような日本を作っていきたい。

山本 隆三 常葉大学名誉教授・国際環境経済研究所所長
 今回は「人口減少や少子高齢化」が課題だったこともあり、農業や漁業など第1次産業を取り上げる高校が多かったと思います。それをどうやって2050年の社会課題につなげていくのかという部分で差がついたように思います。また、今回は非常にユニークな提案が多くて良かったと思います。毎年、提案内容がバラエティーに富んでおり、生徒のみなさんも短時間で集中して修正作業に取り組んだと思います。

郡司 賀透 静岡大学教育学部准教授
 今年は第1次産業に生徒のみなさんが注目したことが特徴だったと思いますが、逆にエネルギーとの関連付けが難しかったかもしれません。今回の活動を通じてエネルギーのことを考えた貴重な経験を、これからも活かして研究を進めていってほしいと思います。

栗原 広樹 静岡新聞社編集局経済部長兼論説委員兼編集委員
 今回、初めて審査委員を務めさせていただきましたが、いろいろな指摘を踏まえて自らの提案を磨き上げるというみなさんのたくましさに心を打たれました。この経験は必ず今後も生かせる機会があると思います。これからも複雑で難しい課題にぶつかることがあるかと思うので、そういった力を発揮していってほしいと思います。

間庭 正弘 日本電気協会新聞部(電気新聞)新聞部長
 この2日間で生徒のみなさんが自分事として集中して何かを考えるという経験をしたことはとても良い機会だと思います。また、自分で考えたことを人に向けて発信しブラッシュアップしていくことが、これからの社会課題の解決には必要だと思います。これからも自分で考えたことは積極的に周りの人に発信していってほしいと思います。

開沼 博 東京大学大学院情報学環准教授(総合コーディネーター)
 今回は農業、漁業、ダイバーシティー、耕作放棄地問題など非常に具体論が多かったと思います。インターネットで調べただけだと憶測や理想論にとどまってしまいますが、一歩踏み込んで自分たちで考え、議論が深められるかというところが重要です。答えがない問いにどう向き合うかというときに、誰かがやってくれるのではなく、自分が解決してみようという気概が大切です。そういう意味では、自分の身の回りの風景に基づいて課題を解決するという視点が持てたかという点で審査も差がついたと思います。これまでにない論点が出たというのはエネルギー・ピッチが発展している証でもあり、生徒のみなさんにもこれまでにない学びの機会になったと思います。

 2023年度から創設された「動画審査部門」では、今回は4校がエントリーしました。各校は会場審査部門の生徒らとともに、夏のオープンセミナーやエネルギー関連施設見学会、オリエンテーションなどを経験。自ら調べ学習をしたり、アドバイス・ミーティングや外部連携講師とのディスカッションなどを通じて、自分たちの発表をまとめました。12月上旬に動画データや提出書類を事務局に送付。12月中旬に審査委員3人による厳正な審査の結果、最優秀賞には「伊豆半島まるっと水素特区構想」を発表した三島北高校が選定されました。優秀賞には「水力発電のイメージ向上」の科学技術高校、敢闘賞には「新しいシステム!?『相乗りシステム!』」の川根高校、参加賞には「税金と発電」の浜松開誠館高校がそれぞれ選ばれました。

動画審査部門 参加校と発表概要(敬称略)
  • ● 三島北高等学校/チーム名:GreeeeeeN MK
    「伊豆半島まるっと水素特区構想」
    指導教諭:堀池志帆
    研究メンバー:大嶽瑛巴、早田結、萩原実奈、糸山真央、中山阿美、星野さゆり
  • 地震など災害時には停電や孤立集落が課題となる。私たちは水素を使って伊豆半島の問題を解決したい。半島内に水素ステーションを作り、普段から水素を活用できる方法として、老人ホームで使用するための水素バスや伊豆グランパル公園でのイルミネーションを考えた。水素特区を伊豆半島から日本全体に広げていき、水素社会の実現を目指したい。
  • ● 科学技術高等学校/チーム名:科学技術高校理工科
    「水力発電のイメージ向上」
    指導教諭:内田匡
    研究メンバー:塩澤昊、海野孝介、遠藤慧音、戸井口卓磨、仁井瑛太、望月篤樹
  • 私たちは国内で低コストかつ安定して発電することのできる水力発電に着目した。水力発電など再生可能エネルギーには環境価値が付くことから、買う側からすると価格が高くなってしまう。そこで、水力を身近に感じてもらうことが大切だと感じ、
  • ● 川根高等学校/チーム名:川根Generators
    「新しいシステム!?『相乗りシステム!』」
    指導教諭:小林祐輝
    研究メンバー:神長貴弥、武田歩輝、中村胡春
  • 私たちは川根本町の移動手段を便利にすることで、町民の生活が快適になり、人口減少を止める一助になると考えた。また、交通手段に関わるエネルギー課題としてCO2削減がどうできるかを考え、相乗りシステムに着目した。現在、町では「川根本町公共交通計画」を策定しており、今回自分たちがまとめた活動を町に提案していきたい。
  • ● 浜松開誠館高等学校/チーム名:SDGs部
    「税金と発電」
    指導教諭:本間友也
    研究メンバー:佐原遼哉、木村綺那、小森皓太
  • 私たちは税金に関する問題について考えた。特に、消費税は労働力の減少によって、物価が高騰するたびに負担が大きくなり、生活が困窮しやすくなっている。エアコンがつけれられず熱中症になる要因としても、物価や税金の高騰がある。そこで今後、新設される駅など大人数が集まる場所に、重さを感知して発電するパネルを設置することを思いついた。
最優秀賞の三島北高校

萱野 貴広 静岡STEAM教育推進センター・理事
 動画審査部門の最優秀賞の三島北高校の作品は、水素特区というテーマがタイムリーで勝因の一つだったと思います。伊豆半島の課題解決のために水素を活用するという目的が最後までブレず、具体例を挙げながら料金やコストを計算し、客観的に数字で示しました。探究することの意味は、単に調べることだけではなく、自分の問題として取り組むということが大切なスタートです。その後、探究活動をしていき、最終的に発表をしますが、発表に至るまでに根拠と主張をきちんと整理し、論証と反証というプロセスを経た上で主張を組み立てていくことが大切です。対面の発表と動画での発表ではそれぞれ違った魅力があると思います。来年度も動画審査部門でより高みを目指した作品を期待しています。