第7回高校生が競うエネルギーピッチ

共通活動

(オリエンテーション、エネルギー基礎講座、ワークショップ、クイズ大会)

開催日:8月4日(月)
開催形態:リアル開催(会場:静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」)

 2025年度は夏休み期間中に参加校すべてが参加するオープンセミナーを開催しました。
[当日プログラム]
①オリエンテーション
講師:開沼博氏(東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授)
②エネルギー基礎講座
講師:金田武司氏(株式会社ユニバーサルエネルギー研究所代表取締役社長)
③ワークショップ
講師:開沼博氏(東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授)
④クイズ大会 参加12チームで予選を行った後、決勝戦を行いました。

 2025年度は生徒のキックオフイベントとしてオープンセミナーを開催し、全9校・12チームの生徒・教諭ら約60人が参加しました。プログラムは、今年の課題、社会課題とエネルギー問題の捉え方、エネルギーの基礎的な知識など、1日を通じて探究活動を体系的に学び、自らのテーマを設定する上で参考となりそうな内容としました。開沼博先生がオリエンテーションを行い、探究における「問い」の重要性を強調しました。エネルギー基礎講座では、金田武司先生が国際動向をエネルギーの切り口で解説。また、コミュニケーションツール「Discord」を活用し、探究する手法を学ぶため、開沼先生によるワークショップも実施しました。ランチミーティングやクイズ大会を通じて、生徒同士の交流も深めました。

オリエンテーションで開沼先生は「問い」の重要性を強調
ワークショップでは探究活動の手法を学んだ
往年のクイズ大会のセットを用いて盛り上がった

開催日:①8月18日(月)、19日(火)袋井バイオマス発電所・岡崎ソーラーシェアリング発電所
    ②8月20日(水)中部電力・浜岡原子力発電所
開催形態:①または②の希望に応じて実施した
参加者:全参加校の生徒・教諭(約50人)

 袋井バイオマス発電所・岡崎ソーラーシェアリング発電所の見学会では、生徒が燃料の木質チップにじかに触れ、大きな発電設備を体感したほか、太陽光発電と農業を融合した先進的な取り組みを学びました。浜岡原子力発電所の見学会では、原子力発電の仕組みなどを学び、原子炉の大型模型や実物の防波壁など、さまざまな設備を見学しました。緊急時対策所や運転訓練シミュレーターも訪れました。

木質チップを燃料とする袋井バイオマス発電所
太陽光発電と農業を融合する岡崎ソーラーシェアリング発電所
発電の仕組みを学んだ浜岡原子力発電所

【学校ごとの個別開催】
開催日:10月上旬~10月下旬 学校ごとのテーマに応じて順次実施

 フィールドワークは参加校がそれぞれ決めたテーマに応じ、大学・企業・自治体等の第一線の研究者や担当者と直接対話を行う場です。基本的にはオンライン講義で実施しましたが、施設見学を含めた講義も一部で実施しました。講師の方からは「エネルギーや環境に対する理解や探究は間違いなく、これからの世代は今以上に求められます」(株式会社森のエネルギー研究所)、「バイオエタノールに是非興味を持ってもらい、日本のため、社会のため、環境のため、頑張って探究活動を進めてほしい」(S-Bridges株式会社)などの声が聞かれました。

高校名 講義の内容 ご対応頂いた
企業・大学・機関
三島北高校 バイオガス発電の基礎とアーキアエナジーの取り組み
  • アーキアエナジー株式会社
遠江総合高校 世界の環境・食料問題に貢献するバイオ燃料生産技術の開発
  • 東京大学・小原聡特任教授
バイオエタノールの基礎
  • S-Bridges株式会社
浜松開誠館高校 『発電床』の紹介と可能性
  • 株式会社グローバルエナジーハーベスティング
  • 環境発電(エネルギーハーベスティング)講義
  • 東京大学・三好智也特任助教
御殿場南高校 森の金太郎発電所による木質バイオマス発電事業
  • 小山町林業振興課
森林資源の有効利用と木質バイオマス利用のすすめ
  • 日本木質バイオマスエネルギー協会
科学技術高校 遠州フォレストエナジー発電所
  • 静岡ガス株式会社(袋井バイオマス発電所)
木質バイオマス発電の基本的な技術と森林資源の地産地消と絡んだ具体的な取り組み
  • 株式会社森のエネルギー研究所
榛原高校 温排水の利活用
  • 静岡県温水利用研究センター
遠江総合高校で実施したオンラインによるフィールドワークの様子
施設見学も同時に行った科学技術高校のフィールドワークの講義風景

開催日:11月22日(土)
場所:静岡県男女共同参画センター「あざれあ」

 予選会の約1週間前、今回初めてオンラインでプレ発表という機会を設けました。
一部の審査委員からあらかじめ問題点や課題の指摘を受けたことで、生徒は発表内容を整えた上で予選会に臨みました。
予選会の会場は静岡駅近くの静岡県男女共同参画センター「あざれあ」です。例年同様、発表の前にはオープニングランチが開催され、参加校の教諭・生徒が自己紹介を行い、昼食をとりながら歓談しました。その後、予選会は緊張感も漂う中、これまでの探究活動の成果を広く発表する場となりました。各校の発表に対して審査委員や他校の教諭・生徒からも様々な意見や指摘が出されました。特に審査委員からは厳しい指摘も出るなど、自分たちの発表内容に何が足りないかが明確になりました。
一方、自分たちの発表内容の要点をいかに的確に伝えられるかが重要です。15分という限られた時間の中で、発表内容をきちんと整理し、分かりやすく伝えられるかがカギです。高校生たちは発表内容に対する様々な指摘を確認しながら、あらためてチーム内で手分けして調べものをするなど、夜遅くまで修正作業を続けました。

予選会の様子
他校からの付箋には示唆に富む意見も
発表後の修正ミーティングの様子

 会場審査部門の予選・本選では、「グラフィックレコーディング」を導入しています。専門のグラフィック・レコーダーの方が各校の発表を受け、その内容のポイントを第三者の視点で絵にします。これは発表内容の「見える化」だけでなく、発表で何が欠けていたのかなど、当事者も気づかなかったことを視覚的にとらえることができる仕組みです。予選会では審査委員や他校の教諭・生徒が疑問や意見を付箋に記入し、グラフィックレコーディングのボードに貼っていきます。

他校の発表に生徒が疑問点など書かれた付箋を貼っていく
グラフィックレコーディングを見ながら発表内容を再検討する様子
予選会では審査委員から厳しい指摘も

開催日:11月23日(日)
場所:静岡県男女共同参画センター「あざれあ」

 正式な発表の場である2日目の本選は、静岡県男女共同参画センター「あざれあ」の6階大ホールで行われました。参加校は開始直前まで自らの発表スライドの修正に取り組みました。本選では最初に総合コーディネーターの開沼博氏が今年度の活動の経過、各校のフィールドワークの実施状況、予選会の様子などを説明。その後、各校の発表が順番に行われ、各校とも昨日の予選会で出た指摘などを踏まえ、ブラッシュアップした内容を発表しました。質疑応答では審査委員から発表内容の実現可能性、検証の数値の妥当性などについて質問が出され、生徒のみなさんはそれに丁寧に答えていました。発表内容は、ごみや樹木、農作物などを原料としたバイオマス関連の取り組みをはじめ、原子力発電の理解促進に向けた取り組みや農業の将来を見通した新技術の提案など、グローカルを意識した多彩なテーマが多く、来場者の方々も各校の発表に熱心に耳を傾けていました。
 厳正な審査の結果、スマート林業を実践し、バイオマス発電やその熱利用を具体化し、荒廃した森林の再生と地域の活性化につなげる取り組みを提案した科学技術高校が初めて最優秀賞に輝きました。優秀賞には榛原高校、敢闘賞には三島北高校、遠江総合高校、静岡新聞社賞は御殿場南高校、電気新聞賞には浜松開誠館高校がそれぞれ選ばれました。

本選の会場の様子
工夫を凝らした発表も注目された
初めて最優秀賞に輝いた科学技術高校の生徒
全体での記念撮影

科学技術高等学校・エネルギーピッチャー4番の久保田

発表テーマ:「過疎地域の復興案」
指導教諭:内田匡
研究メンバー:久保田晟、水谷爽良、市川陽菜、百瀨綸音、川下洋史、神谷響

 わたしたちは、「静岡市清水区和田島の放置森林の再生とバイオマス利用による町おこしの可能性を探る」ことを提案する。将来的に2050年にはバイオマス発電を通じ、放置森林問題と地域の過疎化を改善したい。まず対象とする和田島地区は、8~9割が森林で人口は666人。この地区では、最近も実際に大雨が襲い、大規模な土砂崩れが発生した。その原因の一つが放置森林だったことから、これを繰り返さないためにはどうするかを考えた。荒れた森林の手入れが必要ではあるが、そもそも林業の人手不足が課題だ。その解決策としてスマート林業を実現したい。そうすれば、おのずとバイオマス発電の燃料(チップ)の安定供給もできるようになる。そして、バイオマス発電では、地元などの国産チップを使い、比較的小型の発電機で発電する。生み出した電力はFITで販売するほか、そこで生じた排熱はサウナ事業に利用する。バイオマス発電では、発電量、売電量を割り出すため、設備の稼働時間、チップの必要量などを検討した。そこから、本当に実現できるかどうか、コストや収益を試算した。最終的には年間912万円の黒字を確保でき、初期費用は10年で回収できる見通し。今後FITによる制度そのものがなくなっても、熱販売としてサウナに力を入れ、和田島地区の特産の茶を使った茶蒸気サウナを提案し、観光客の誘致にもつなげる。今後の展望は和田島地区を先行モデルとして確立した後、全国展開したい。

榛原高等学校・バライロ

発表テーマ:「地域の理解促進のために私たちができること~温排水の広報を通して~」
指導教諭:北川浩
研究メンバー:髙塚奏、鈴掛頼永、大久保吏皇、増田小夏、青木莉来、沖田陽悠

 わたしたちが大切にするキーワードは「地元でできることから始めよう」。原子力発電所の再稼働はカーボンニュートラルの実現につながる。しかし、地元でも再稼働に十分な理解があるとは言い難い。そこで、わたしたちが地元でもあまり広くは知られていない原子力発電所の温排水の利点について、広報することで、地元の御前崎市民の再稼働への理解を促進したい。浜岡原子力発電所の再稼働は身近な問題だが、この再稼働に懸念を持つ人もいる。では再稼働に向けて必要なこと、理解促進に向けてできることは何か。牧之原市、御前崎市の意識調査の結果を見ると、再稼働すべきとする考えを増加させなくてはいけない。校内で事前に行ったアンケートでも、マイナスのイメージを持っている人も多いことが分かっている。また、地元に恩恵をもたらす温排水を知っているかを調査したところ、知っている人は少ないことも分かった。このため、温排水に着目し、地元で発表して理解が得られれば、再稼働の第一歩になるのではと考えた。静岡県温水利用研究センターへの取材を通じ、温排水で魚が養殖でき、過去には年間6千万円の利益を上げたことも知った。毎年開催されるサイエンスフォーラムで発表したい。校内のアンケートでも温排水のPRが意識の変化につながることも確認した。温排水の農業利用の可能性も調べ、局所加温を通じたイチゴ栽培に適していると考えている。

三島北高等学校

発表テーマ:「バイオガスHACCOして輝く未来」
指導教諭:堀池志帆
研究メンバー:中村充輝、山口新、大川真央、青木智子、杉山杏珠、工藤沙紅良

 目指すゴールは「本来捨てられてしまうようなものを資源として有効活用していく」。グローカルの起点として、まずローカルな部分を調べ、ごみの分別に着目した。例えば、沼津市は「混ぜればゴミ、分ければ資源」のスローガンの発祥地。これを踏まえ、ゴミの中から、生ゴミを選び、バイオガス化することにしたいと考えた。生ゴミは焼却炉の燃焼効率の悪化にもつながるため、分別してメタン発酵し、バイオガスを生成し、資源として利用できる。これを推進するには、既存の焼却炉の横にバイオガス施設を備えた複合施設を提案したい。まず、燃えるゴミと生ゴミの分別を徹底して回収。複合施設では生ゴミから生成したバイオガスをパイプラインで焼却炉に送り、焼却炉で使用する化石燃料を代替する。回収した生ゴミから作り出せるバイオガスの熱量などを試算した結果、焼却炉で使われる化石燃料を代替できると見通す。しかも、ごみの輸送費は増えず、CO2排出量を削減できるため、カーボンニュートラルにつなげられそう。具体的なCO2削減量を試算するとともに、バイオガス発電施設の初期投資、費用、収益などを計算した。売電収入と化石燃料の削減メリットを考慮すると、費用対効果も十分見込めると判断。「混ぜればゴミ、分ければ資源」を達成できる。これを2050年に向けて実現できるよう、バイオガスによる「発酵」、輝く未来を示す「発光」を目指し、循環型社会に近づくことができる。

遠江総合高等学校

発表テーマ:「森町温故知新S+3Eプロジェクト」
指導教諭:原口博之
研究メンバー:髙木優真、伊東樹更、大隅拓翔、杉山瑶史、高橋來維、平川峻

 バイオエタノールはどのように生産するのか、実際に実験を試み、発酵、蒸留の工程を経て、純度の高いエタノールを回収することができる手応えを得られた。一方、世界的なエタノールの自給率を見ると、日本はほとんどを輸入に頼っているが、資源が乏しい日本だからこそ、国産のバイオエタノールの開発は急務。世界ではガソリンへの混合が活発に行われ、特にブラジルは2030年までにエタノール混合率30%の普及の実現を目指すほど。日本では、まず糖が取れる農作物、もっとも適しているサトウキビの生産が必要である。沖縄、鹿児島以外ではあまり生産されていないが、掛川市でも昔は生産されていた歴史もある。そもそもサトウキビからエタノールを効率的に生産するには、大きなハードルがあるが、そうした解決を目指した研究開発が東京大学などで行われている。われわれがなぜサトウキビに関心を持っているのか、それは遠江総合高校の前身である周智農林学校を、森町出身で日本製糖業の父と呼ばれた鈴木藤三郎氏が創立した歴史があるから。温故知新として鈴木藤三郎氏の功績からバイオエタノールの普及の手がかりを見つけたい。現在、5つのプロジェクトを進めており、他校にはない仲間と設備で一つの研究所として取り組みたい。耕作放棄地の活用を目指し、町役場の担当者や同窓会長にもインタビューして調べたが、少しずつプロジェクトを進めて、森町からバイオエタノールを普及させたい。

御殿場南高等学校

発表テーマ:「バイオマス発電の排熱エネルギーを活用した循環型地域社会の実現」
指導教諭:芹澤光
研究メンバー:小野祥尚、青木柚歩、岩瀬弘季、杉山和輝

 御殿場市や小山町は、木質バイオマス発電が多く、地域との親和性も高い。しかし、木質バイオマス発電は大量の排熱が活用されていない。一方、農業従事者の高齢化や耕作放棄地の増加といった課題もある。そこで、排熱の活用が地域の魅力を高める価値を作り、地域資源の地産地消を促進できるのでは、との問いを設定した。具体的には、排熱を腐葉土作りとともに、蒸留による香りの抽出に活用し、耕作放棄地での作物栽培と特産品加工の流れを生み出すことを考えた。腐葉土作りでは実験も行い、最適温度帯、排熱活用の可能性を探り、特産の「みくりやそば」などを踏まえ、地域特産品への応用を検討した。さらに、排熱を活用した蒸留により香りを抽出する実験も行った。そばの実とコーヒーを対象素材としたが、真空蒸留により、そばの実で得られる香りを使用すれば、そば焼酎やそばのジンに生かせる。さらに、地域資源を循環させる新しい仕組みとして、排熱、腐葉土、耕作放棄地、そば、蒸留、商品化のプロセスをつなげ、四季を通じて取り組めることを構想した。これらを実現する設備整備などを想定し、季節サイクルと地域資源が自然に連動する「自立型循環産業」を考えた。観光促進も意識し、さまざまな体験プランも提案したい。国内外への応用の可能性もあるが、見過ごされていた排熱を資源に、耕作放棄地の課題に結びつけ、地域が自立的に循環する持続可能な社会を目指したい。

浜松開誠館高等学校

発表テーマ:「見回りの負担をゼロへ~スマート罠が農家の時間と安心を取り戻す~」
指導教諭:本間友也
研究メンバー:足立璃久、伊達結叶、増田大誠、飯塚頼漢

 2050年の理想の未来は、身体と心に優しい農業ライフの実現を目指し、メンテナンスフリーの完全自立型のスマート罠の実現を目指したい。まず現状の農業は高齢化と担い手不足に直面している。特に高齢化は深刻で、早朝・夕方の定期的な罠の見回りなどは、高齢者にとっては体力的・時間的に負担が大きい。そこで、ICTを使った罠の見回りが必要になる。既に先行事例として、罠の作動を検知してメールや通知を送る捕獲検知ができるスマートトラップはある。しかし、初期費用が高く、設置工事が複雑、中継局が必要で電源は太陽光パネルなどで天候に依存するほか、バッテリー交換も必要で、保守・点検の手間もある。そこで提案したいのは、シカやイノシシなどを対象に、衝撃発電と風力発電のハイブリッドによる完全自立型の通知装置。設置場所を選ばず、安価に利用できる可能性がある。技術的には罠にかかった衝撃を圧電素子で電気に変えて利用。また、もう一つの電源として小型垂直型風力発電機を採用し、2段構えの電源を備えたい。通信にはIoTに対応したSIM通信で携帯電話のネットワークを利用。これにより、通信距離の制約なく、携帯電話回線を利用し、低コストで容易に導入できるほか、バッテリー交換や充電も不要となる。風況や充電不足のリスクは残るものの、改善を図りながら実証・実験、製品化のステップを踏み、全国への普及を図りながら、身体と心に優しい農業ライフを実現したい。

山本 隆三 常葉大学名誉教授
今回はテーマが「グローカル」。ローカルとグローバルに分けると、その内容はローカルな話に集中したと思います。そこでバイオマスを取り上げた発表が多かった。身近にあって、気になったのがバイオマスや廃棄物だったと思います。もう少しグローバルな視点を持ってもらったほうがよかったかもしれません。中でも科学技術高校は予選から本選への改善もあり、ローカルな話を広げられ、非常にまとまっていました。今年は本当にレベルが高く、どこが優勝してもおかしくない戦いだったと思います。

郡司 賀透 静岡大学教育学部准教授
今回は本当にレベルが高く、審査委員も悩みました。なぜ、その研究やテーマに取り組んだのか、ストーリー性を話した上で、2050年に結びつけている点で各校の特徴が出たと思います。また、実験を取り入れ、そのデータを基に話をしているところは非常に良かった。一方、そのデータが果たして本当に妥当なのか、検証してほしいと思いながら聞きました。

栗原 広樹 静岡新聞社編集局経済部長兼論説委員兼編集委員
8月から長い間、普段の勉強とは違う形で、地域の課題に向き合い、いつも使うところとは違う頭と体を使って、さまざまな課題に向き合った経験は、きっと将来、なんらかの突破力という形で、みなさんの血となり、肉となり、これからの難しい世の中を生きていく上での力になっていくと思います。この経験を大事に、こうしたチャレンジをこれからも重ねていくつもりで歩んでいただきたいと思いました。

圓浄 加奈子 日本電気協会新聞部(電気新聞)次長兼論説委員
高校生の皆さんは、いろいろと忙しい中で、これだけエネルギーと社会課題について考える時間を持ってくれたことに対し、本当にうれしく、感動しています。さらに、今後の人口減少社会の中、どのようなエネルギーが相応しいのか、これだけ真剣に考える人がいることは、明るい未来だと思いました。

開沼 博 東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授(総合コーディネーター)
グローカルというテーマで地域のことを考えることをスタートに、チームによってはデータを使って計算したり、いろいろな方にインタビューしたり、実際に実験をしながらエネルギーはどういうものかということに迫るなど、様々なアプローチがとられたと思います。寄せ集めの調べ学習を超え、大人でも驚くような手の込んだ発表がありました。とても進歩しました。これまで以上にエネルギーの本質を考えるということが見えました。主体的・対話的な学びが大事です。教育の根本が変わっている今、そこに一つの答えを与えたプログラムに仕上がったと思います。

 2023年度から創設された「動画審査部門」では、今回は5校・6チームがエントリーしました。各校は会場審査部門の生徒らとともに、夏のオープンセミナーやエネルギー関連施設見学会などを経験しました。自ら調べ学習をしたり、アドバイス・ミーティングを受けたりして、自分たちの発表をまとめました。11月上旬に動画データや提出書類を事務局に送付。審査委員からの指摘を受け、修正を加えた最終版を11 月中旬に再提出しました。審査委員3人による厳正な審査の結果、最優秀賞には「CO2リサイクル大作戦~超高速炭素循環システムによるバイオマス発電~」を発表した焼津中央高校が選ばれました。

動画審査部門 参加校と発表概要(敬称略)
  • ● 伊豆中央高等学校/チーム名:伊豆中央高校科学部
    2050年問題について ~バイオマス発電を用いて二酸化炭素量を減らすための対策~
    指導教諭:清水隆弘
    研究メンバー:大澤心結、斎藤悠翔、下山咲耶、鈴木琉太郎、水谷和葉、松富愛子
  • 2050年のカーボンニュートラル実現に向け、食品廃棄物を焼却して処分する際に発生するCO2排出量に着目した。これを避けるため、食品廃棄物などを微生物で発酵させ、メタンガスを発生させて発電につかうバイオガス発電を、伊豆の国市で、実現できないかを検討したもの。同様の取り組みを牧之原市で実施する事業者にも取材した。経済性なども試算しながら、事業化のハードルなどを検討した結果を発表している。
  • ● 科学技術高等学校/チーム名:科技高理工科
    農業の後継者不足問題について
    指導教諭:内田匡
    研究メンバー:山口瑛太、片瀬琉斗、石井想大、石井喜八郎、本山旭斗
  • 農業従事者は高齢化が進み、新規就農が求められていることを踏まえ、伝統的な農業からの転換を図り、スマート農業を促進することで、そうした課題解決を目指すことを提案している。温度・湿度の管理も容易で節電を図る先進的なシステムを掲げ、スマート農業の将来性を展望。そうした市場拡大を通じ、低コスト化を期待する一方、従来の農業で培った様々な情報をデジタル化するなどの方策を提言している。
  • ● 駿河総合高等学校/チーム名:チームSURUSO
    雨滴発電 〜天候に左右されない未来のエネルギー〜
    指導教諭:高辻倫江
    研究メンバー:村上恭介、満間太陽、髙鳥祐雅、武内梨玖、杉山天斗
  • 将来の分散型エネルギー社会を見据え、太陽光発電では雨天時に発電効率が低下するデメリットを補う形で、圧電素子を用いた雨滴発電の可能性に期待する内容。生み出す電力は確かに微弱ではあるが、少しでも実用性を見出すため、実際に圧電素子を使用した実験を重ねている。そこから、さらなる改善の方向性を打ち出し、将来的には、雨天時・災害時の補助電源として可能性があるという結論を導いている。
  • ● 榛原高等学校/チーム名:エネビジョン
    夏休みを移動させる
    指導教諭:北川浩
    研究メンバー:河原崎珠生、北川優奈、鶴見亞樹、丸尾美紗貴、白石雄太郎、飯田瑞季
  • 地球温暖化防止や化石燃料の使用量を減らす目的から省エネの重要性を指摘し、夏季のエアコンの電力使用量を抑える、クールシェアにつなげるため、学校の夏休みを移動することを提案。夏休みの移動で家庭の消費電力は増えるが、地域全体では消費電力が減るとの仮説をたて、家庭や学校の消費電力を試算して検証した。実現する難しさも踏まえながら、地域・自治体、自分たちができることも示している。
  • ● 榛原高等学校/チーム名:5D’s
    牧之原の茶葉を活用したバイオマス発電
    指導教諭:北川浩
    研究メンバー:大塚勇翔、志田陽向、増田奏汰、松浦想一郎、松本駿平、八木貴弘
  • 様々な再生可能エネルギーがある中、バイオマス発電に注目し、特に地元・牧之原が産地である「お茶」を活用するアイデアを構想した。地元JAにも調査し、茶の生産プロセスで生じる茶渋などを使ってバイオマス発電を実施すれば、どれだけの電力を得られるか試算。牧之原市の全世帯の1.4日分の電力が得られると想定したが、発電量は少なくても緊急時の電力を賄う道などに期待を示している。
  • ● 焼津中央高等学校/チーム名:TEAM焼津中央
    CO2リサイクル大作戦 ~超高速炭素循環システムによるバイオマス発電~
    指導教諭:東友貴
    研究メンバー:八木頼生、高橋由梨杏、足立智穂、岡村幸泰、小泉琥太朗
  • 雑草から作る雑草ペレットを用い、バイオマス発電を行うアイデアを打ち出す。特に雑草の中でもススキが適しているとして、樹木(シラカシ)を比較対象に試算するなど、その有効性を強調する。一方、発電で生じたCO2を有効活用し、空気中より濃度を高めて、原料となるススキの成長スピードを速めることも提案。そうした取り組みにより、「超高速炭素循環型社会」という将来を描いている。
最優秀賞の焼津中央高校
焼津中央高校による動画の一コマ

萱野 貴広 静岡STEAM教育推進センター・理事
 焼津中央高校の動画は、バイオマスを使って発電し、発電で生じたCO2を回収して植物の成長に使うものです。CO2の循環が起きることを提案しています。独自の視点もあり、CO2の活用に身近なススキに注目し、訴える力がありました。技術革新による将来の可能性も感じました。最初の提出時から動画ならではのメリットを生かしたプレゼンでしたが、他校の提案からは一つ飛び抜けていた印象です。観衆をひきつける力がありました。
総評としては、その結論は果たして妥当性があるのか、主張と根拠の整合性を見極める論証とともに反証も大切です。