日時:9月19日(土)午後1時~午後2時30分
テーマ:SDGsとエネルギー問題
今年のキックオフイベントとなった「エネルギー基礎講座」は、9月19日(土)の午後、
出場する3校と東京の講演会場を結んだオンライン形式で行われ、およそ50人が参加しました。
総合コーディネーターの開沼博・立命館大学衣笠総合研究機構准教授が開幕にあたってメッセージを発信。「地球規模の課題、また歴史の転換点などをよく見ていくと、背景にエネルギーを巡る問題が存在しています。エネルギー問題には社会の成り立ちを考えるための多くのヒントが詰まっている。今回の課題に広く深い視野をもって取り組み、これからの人生に役立つきっかけをつかみ取ってもらいたい」と、高校生たちを励ましました。
続いて竹内純子・国際環境経済研究所理事・主席研究員が「SDGsとエネルギー問題」をテーマに講演。冒頭、「クリーン・クッキングと聞いて何を思い浮かべるか」と高校生に問いかけ、世界最大の環境健康リスクは実は大気汚染であること、中でも途上国などでの薪を使う屋内調理で発生する煤(すす)が引き起こす死亡リスクが非常に大きいことについて説明し、「クリーン」という言葉の意味合いやエネルギーの価値は、経済的な立場や資源の入手のしやすさなどによっても大きく変わることを示しました。
そのうえで、国内外のエネルギー需給構造や気候変動問題とエネルギーの関わりなどを幅広く説明し、「気候変動問題は経済問題です。低炭素化対策も理念だけではだめ。やはりコストが適正でなければ続きません」と指摘。イノベーションや技術革新と同様に、今使われている技術を低コスト化することも実際には効果が大きいということなどについて、わかりやすく解説していただきました。
高校生たちからは、講演内容への質問のほかにも「太陽光発電の拡大は発電由来のCO2削減にはなるが、希少資源の大量消費でもある。リサイクルや廃棄物などについての課題解決策はありますか」「バイオマス燃料と森林資源保護、食料問題との両立はできるのでしょうか」「途上国でのイノベーションはコストの面で難しいのではないでしょうか」など、日ごろの学習や関心から生まれた幅広い内容の質問が飛び出しました。竹内さんも「よく考えられた質問ばかり」と感心しながら、活発なやりとりが続き、予定時間を超過しても質問が絶えないという盛り上がりの中で閉会しました。
【オンライン講義】
10月~11月 各校別に実施
【合同講義】
日時:11月7日(土)午後1時30分~午後3時
テーマ:自動車の未来とSDGsの達成
2020年度 高校生が競うEnergy Pitch!」+WWL連携校 合同講座
研究内容を深めていく過程で、本やネット情報の「調べ物」で終わらせず、その課題に大人たちがどう向き合っているのか、一線の研究者たちとの対話を行う場を設けているのもエネルギー・ピッチの特徴です。新型コロナ感染防止のため、実際の訪問はかないませんでしたが、「オンライン講義」は機会を多く得ることができました。
講師の方々からは、「目的意識をもって学んでいるので、大学でも聞かれない的を射た質問が多かった」(渡邉信・筑波大学特命教授・藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター長)などの評価も。また「完璧な一つの技術というものはなく、特質を組み合わせて一つずつ問題を解決していくのが現実的。研究テーマの『周辺』にも目を配ってほしい」(浅井靖史・西松建設株式会社技術研究所環境技術グループ上席研究員)など、企業人としてのアドバイスにも耳を傾ける場となりました。
高校名 | 研究テーマと講義の内容 | 対応企業・大学 |
---|---|---|
駿河総合高校 | 微細藻類の生態・特徴 バイオ原油実用化の研究と動向 |
・筑波大学藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター ・西日本技術開発株式会社 |
三島北高校 | 宇宙エレベーターの仕組みと開発計画 | ・株式会社大林組 |
静岡市立高校 | 微生物燃料電池の研究開発動向と活用法 | ・西松建設株式会社 ・日本工営株式会社 |
出場校3校+静岡高校、沼津東高校の合同 | 2050年の低炭素化に向けて― 電動車の普及拡大 |
・トヨタ自動車株式会社 |
このほか、11月7日にはエネルギー・ピッチ参加校と、静岡県のワールドワイドラーニング連携校の静岡高校、沼津東高校の合計5校・およそ50人が三島北高校に集まり、合同講義も実施しました。講師はトヨタ自動車広報部の大島翔太さんです。静岡県裾野市に未来型の都市を構築予定のトヨタ自動車は将来、エネルギーとモビリティが融合する世界を想定しています。
大島さんは、自ら都内から三島北高校まで運転してきた燃料電池車「MIRAI」を高校生たちにみせながら、電動車の普及拡大と低炭素化社会への貢献について、わかりやすく解説。水素社会の実現に向けてのインフラ整備の現状や、バッテリー開発の動向などについても高校生たちから多くの質問を受けるなどで、熱心なやりとりが行われました。
日時:11月21日(土)午後1時~午後7時30分
場所:あざれあ 大会議室
発表会は2日間にわたって開かれました。初日は予選会。
論旨があいまいな点や不足している内容などを、審査委員が指摘します。また生徒同士も互いに疑問を投げかけます。
予選、本選を通じて行った「グラフィックレコーディング」とは、発表内容を図解し「見える化」するもので、発表者自身も見えていなかった課題が明確に整理できる仕組みです。各校ごとに作成されたレコーディングペーパーは疑問点を張り付けた付箋でいっぱいに埋まりました。
審査委員からは、全体を通じて、「フィールドワークで指導を受けた企業や大学からの資料の引用と、自分たちのチームのアイデアの部分について、区別を明確にするように」「使用するデータは出所もしっかりとチェックし、正しく扱うこと」との指摘がありました。
個別には、静岡市立高校には微生物燃料電池について自分たちで実験を行ったことが評価された一方、それをもっと発表に生かしてはどうかとの指摘がありました。また時間内に発表が終わらなかった駿河総合高校には、本番では時間内に発表を終えるために内容を絞りこむ、また訴えたい部分の順番などへの工夫が必要との注文もつきました。三島北高校には、主題としている宇宙エレベーターそのものの仕組みや開発の意義についての説明がほしいとの意見も出されました。審査委員からのアドバイスや他校からの指摘を踏まえ、翌日の本選をどうブラッシュアップして臨むか―。高校生チームの修正作業は、夜遅くまで続きました。
日時:11月22日(日)午後12時~午後3時30分
●場所:あざれあ 大ホール
本選は「あざれあ」の大ホールでの開催と文字通り「晴れの舞台」でしたが、
今回は残念ながら、コロナ感染対策として無観客で実施しました。
冒頭、総合コーディネーターの開沼博・立命館大学准教授が、これまでのフィールドワークなどで学んだ内容を整理しながら解説しました。また静岡県出身で、アフリカの布を使ったビジネスを展開している仲本千津さんがビデオメッセージの形で登壇。「自分が何をやりたいかを常に問い続け、定まったら一歩、行動に踏み出してほしい。壁にぶち当たっても諦めずに」と生徒たちにエールを送りました。
発表は、三島北高校、駿河総合高校、静岡市立高校の順で行われ、三島北は、宇宙空間に建設する発着場と地上をワイヤで結ぶ「宇宙エレベーター構想」を主題に掲げました。ワイヤと昇降機の間に生じる摩擦熱を発電に用いるアイデアが称賛された反面、技術的・政治的課題の解決策を問われました。二番手の駿河総合はアオコや雑藻類を用いてバイオ燃料を生産する内容。審査委員から需要と供給能力について問われると、フィールドワークでの聞き取りを踏まえ、具体的な数字を用いて回答しました。静岡市立は「微生物燃料電池」の活用が主題。電極の素材を変えるなどの実験にも取り組んできた点が高い評価を受けたほか、予選からより効果的な発表の組み立て方に修正した点が評価されました。
審査では、3校ともいずれかの審査委員が最優秀賞に推すなど、実力は伯仲。それぞれの研究内容や発表の手法などの良かった点などについて、具体的に議論を行いましたが、最終的には得点評価を重視しつつ、予選会から大胆に発表手法を修正した駿河総合が最優秀賞を獲得しました。同校は2年連続の最優秀賞です。また、静岡新聞社賞に三島北、電気新聞賞に静岡市立がそれぞれ選ばれました。
「The way to solve international issues by MFC
―微生物燃料電池でSDGsをソリューションする。―
指導教諭:海野貴央
研究メンバー:伊藤風太、井柳利功、浦山綾斗、片岡慶汰、丸橋奏
発表タイトル「雑藻類を用いた地産地消オイルプラント」
指導教諭:氏原潔
研究メンバー:安藤凜太郎、大石真一郎、塚田凪砂、鳥澤勇輝、北條珠誠、村松豊
発表タイトル「未来を変える宇宙エレベーター」
指導教諭:山梨睦
研究メンバー:石原諒、片桐紅、佐藤虎太朗、原田尊